切妻の家

  • 長野県佐久市
  • 2004年

Residential Lighting Awards 2004 敢闘賞受賞 (2005年)
「まちなみ住宅」100選 奨励賞受賞 (2005年)

新幹線の駅の建設や計画道路の敷設によって、まちの構造が現在進行形で変わりつつある長野県佐久市に、この住宅は建っています。新設されたインフラに沿って、地域と何の結びつきも持たない味気ない建物によって風景が塗り替えられていっているのですが、それでもこの家の周辺には漆喰塗りの壁に瓦の切妻屋根が載った蔵が幾つも建っていて、昔ながらの風情が残されています。
敷地は、竿の部分がかなり肥大した旗竿型のもので東側には水路が流れています。クライアントは、伝統から断絶したような家は望んでいなかったのですが、その一方で現代的なライフスタイルを楽しんでもいて、子供達と犬が走り回れるなるべく広い連続した室内空間を望んでもいました。そこで外観では、周辺の白漆喰の蔵と共通する切妻屋根の形の黒い金属板の家とすることで、コンテクストに合わせながらも新旧が対比されるようにし、その大屋根の下に連続する大空間が内包されるようにしました。全体は、玄関と主寝室からなる寝室棟とLDK・子供室・水周りからなるLDK棟の2棟からなり、それぞれの棟の方向が直交する形で渡り廊下によって接続されています。
両棟共に、室内において人が通常床の上を動く範囲では壁や収納などによって部分的に間仕切られているのですが、壁の上部では空間は連続していて、軸組みが現された大屋根によって全体が包み込まれるようになっています。各棟の頂部にはそれぞれトップライトが設けられていて、そこから落ちてくる光が軸組みの間を通り抜け、幾重にも反射し、室内を照らすようになっています。寝室棟ではV字型のアルミパンチングメタル板から漏れてくる光が漆喰塗りの室内を柔らかく満たし、LDK棟では軸組みの間を抜けた木漏れ日のような光が壁や床に落ちてきます。