上戸祭の家

  • 栃木県宇都宮市
  • 2014年

 JR宇都宮駅から車で20分ほどの距離にある住宅地に建つ住宅です。街道筋からは少し外れた位置にあるため比較的静かで、敷地のすぐ脇には水路が流れています。ここは一体的に開発された住宅地ではないので、隣地も含め、敷地形状や大きさ、敷地の並び方は不規則でバラバラとなっていますが、設計では周辺環境を含めた敷地の偶然的な条件(水路や景色の良い方向への眺め、隣家からの視線等)を活かしつつコントロールするよう心掛けました。
 建物形状は、プロポーションの異なる2つの家形のヴォリュームが部分的に噛み合うようにつながる形となっています。背の低い棟はLDKと水回りが、背の高い棟には寝室や書斎などの個室と共用の図書スペース(2階)が設けられています。2つの棟は互いに重なりあった部分にある階段室を介してつながっていて、棟や階が互いに分かれているようでつながっているような、中間的で曖昧な印象となるようにしました。こうすることで、2階の図書スペースはLDKの延長のように感じられ、キッチンにいながらもの様子が伺うことができ、時には階段が子供たちにとっての読書スペースに早変わりすることもあります。
 内部の仕上は、白い塗装とラワン合板の2種類が、棟と棟、1階と2階、壁と天井などの区分を単純に分節するやり方ではなく、それらの区別が曖昧になるように、両義的な空間構成の印象を強化するように使い分けています。
 1階のリビングからは古い家では見ることができなかった水路の水が見え、2階ベランダからは遠くまで見通すことができます。LDKの棟は隣家よりも南に位置しているので、ハイサイドライトは午後~夕方の光を室内に導き入れることができ、東向きの大きな開口と相まって1日中LDKを明るくしてくれます。
 冬でも暖かい家となるように、床置き型エアコンを床下に設置し、深夜電力でコンクリート基礎を温風で温めて蓄熱に利用しています。床下の暖気は1階床のスリットから室内に入り、煙突効果によって1階の屋根(天井)勾配に沿って階段室経由で2階へと上昇、図書スペース頂部に設けた給気口からダクトに引き込んで床下まで循環させています。またこの地域の北北東からの卓越風は、1・2階の個室や図書スペースから入りキッチンへとスムーズに抜けて行くようになっています。